162. – シールを貼って個人情報に配慮したふりの偽装制度

6.(概要)登記識別情報は,いわゆる個人情報であるが,実は登記識別情報通知書という書面に
シールを貼って個人情報に配慮したふりの偽装制度であって,自ら変更することも有効証明の自動化
もできず,憲法違反で廃止すべし。
- (意見)登記識別情報は,いわゆる個人情報であるが(先般の佐藤幸治元司法制度改革審議会会
長をはじめとする情報ネットワーク法学会の新保史生慶大准教授にご教示いただきました),その内
実は,登記識別情報通知書という「書面」にシールを貼って,個人情報に配慮したフリをしているだけ
である。一般の国民(個人)が,個人の情報を「個人情報として」オンライン利用することができず,登
記をするときには,司法書士や土地家屋調査士が代理して暗号化して提供しなければ,オンライン申
請できない状態は,「本人しか知り得ない情報であること」を前提にした登記識別情報制度が,本人以
外の司法書士が知って暗号化して提供してしまうことであって,個人情報保護法違反であり,まさに個
人の尊厳の発露であるところの「自己情報コントロール権」の侵害であり,憲法13条違反である。した
がって,これを起案して政省令を改正して個人情報コントロール権侵害をさらに強行した法務省や,こ
れを自己の免責特権として利用している法務局(登記官)は,憲法99条の憲法尊重擁護義務違反で
ある。したがって,この登記識別情報制度は,憲法13条及び99条違反により廃止しなければならな
いのであり,廃止しないこともまた,憲法違反である。
しかも,個人情報保護法上,失効申出制度は廃止や制限をすることはできないのであるから,そのた
め失効申出制度の存在に基づく取引障害は取り除くことができない。また有効証明の自動化について
も,登記官の「証明」責任の問題が絡み,システム上解決不可能であるため,先の「登識研」報告書で
問題点とされた論点は悉く改善できないことが判明している。従って,登記識別情報制度はこの点でも
不動産登記法1条違反なのであると同時に,個人情報保護法違反の問題を孕み,この問題を解決で
きないことは憲法違反の制度である。
一方,司法書士が,申請人本人であることをさまざまな情報を手がかりに確認し,それをもって登記申
請したことがわかれば,登記の真正(正確性)は確実に保たれる。現にそういう制度があるのであるか
ら,これらの制度を利用しやすいように,法改正すればよいのである。たとえば,本人確認情報制度の
規定が面談を必要としたり,細かすぎるせいもあるが,登記識別情報制度の補完手段にすぎないと規
定されてしまっていることが利用阻害要因となっている。すでに自民党PTでは,選択的手段だという
法務省の見解があるにもかかわらず法改正をしないから,この誤った利用が横行している。したがって
この無駄な登記識別情報制度をまず廃止すれば,登記識別情報制度にお金をかけることなく,同時に,
使いづらい本人確認報制度を改正すれば,新オンラインシステム改善は進むのである。

登記識別情報制度において,登記の申請が完了したときに登記識別情
報の通知を受けるかどうかについては,申請人が選択することができるこ
ととされています。また,登記の申請を本人が行うか資格者代理人に依頼
するかどうかについても,申請人が選択することができるようになっていま
す。したがって,御意見にあるように登記識別情報制度が違法なもの,あ
るいは不合理なものであるとは考えておりません。
なお,登記識別情報制度に関する意見に対する考え方については,項
番7のとおりです。