T氏が入ってから最高裁は、おかしくなった?

性別変更の夫 父と認定 最高裁 血縁なくても親子

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013121202000158.html

2013年12月12日 朝刊

性同一性障害で性別を女性から男性に変更した兵庫県宍粟(しそう)市の夫(31)とその妻(31)が、精子提供で出産した男児(4つ)の父親を夫と認めるよう求めた審判で、最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は夫妻の申し立てを退けた一、二審の判断を破棄し、夫を父親と認める決定を出した。

性同一性障害をめぐる初判断で、決定は十日付。民法は、妻が婚姻中に懐妊した子を「夫の子と推定する」と規定しており、性別変更した夫の子にも及ぶかが争点だった。

決定は、性同一性障害者が自ら望む性別を選べるようになった二〇〇四年施行の性同一性障害特例法を踏まえ、「男性に性別変更した者は夫として結婚できるだけでなく、婚姻中に妻が懐妊した子についても民法の規定により、血縁関係がなくても男性の子と推定されるべきだ」との判断を示した。戸籍の「父」の欄に夫の名前が記載される。

判事五人中三人の多数意見。大谷裁判長ら二人は「特例法は、性別変更した性同一性障害者が実子を持つことを想定していない」と反対した。

決定によると、夫は性別変更後の〇八年に結婚し、翌年に妻が男児を出産。昨年一月に本籍地の東京都新宿区に出生届を提出したが、区は父親欄を空欄にしたため、夫妻は訂正許可を求め家事審判を申し立てた。

東京家裁は「男性としての生殖能力がないのは明らかで、実子とは推定できない」と申し立てを却下、東京高裁もこれを支持した。 性同一性障害で性別変更した人の婚姻は増えており、多様化している家族関係を反映した法整備を求める声が強まりそうだ。

◆差別解消へ法整備急げ

<解説>

性同一性障害で性別変更した人の親子関係をめぐり、最高裁が一歩踏み込んだ判断を打ち出した。親子関係は生殖医療の進歩などで多様化している。これまで「現行法では認められない」と親や子の訴えを退けてきた姿勢を改め、当事者の側に立った判断を示したといえる。

初判断は裁判官の三人が賛成、二人が反対という僅差の結論だった。意見の分かれ目となったのは性同一性障害特例法の解釈だ。

性別変更した男性を戸籍上の父と認めるかについて、賛成意見は「特例法は、性交渉で子をもうける可能性がない男女の結婚を認めている。その一方で、妻が婚姻中に懐妊した子を夫の子と推定する民法の規定を認めないのは相当でない」と指摘した。

反対に回った裁判官二人は、性別変更した人の実子を特例法は想定していないと、多数意見の「拡大解釈」に懸念を示した。だが、性同一性障害者の社会生活上の不利益を解消するために制度化されたのが、特例法だ。多数意見こそ、この立法趣旨に沿っている。

ただ、判断の対象は性別変更で男性になった父と子の関係に限られ、男性から女性になった母と子には適用されない。「出産した女性が法律上の母」とする過去の最高裁判例があるためだ。代理母出産では、出産を依頼した女性は法律上の母にはなれずにいる。

正式な婚姻関係にある夫婦から生まれながら、差別的な扱いを受ける子は増える一方だ。この現状にどう向き合うのか。今回、司法は一定の役割を果たしたが、子の法的位置付けを明確にするには、なお十分でない。国会こそ法整備を急ぐべきだ。 (鬼木洋一)

<性同一性障害> 心と体の性が一致しない障害。原因は未解明だが胎児期のホルモン異常などの説がある。2004年施行の特例法により、20歳以上の未婚者で性別適合手術を受けているなどの条件を満たせば、家庭裁判所に性別変更を請求できる。戸籍には変更したことが記載されるため、女性から性別変更した男性が結婚し、妻が第三者から精子提供を受けて人工授精で出産した場合、子どもは婚外子として扱われる。親子関係を結ぶため特別養子縁組をするケースも多い。

棚村政行早稲田大教授(家族法)の話 性同一性障害特例法の趣旨を重視した画期的な判断だ。法律上の親子関係は血縁だけで決まるわけではないと裁判所がきちんと示した意義は大きい。親子の愛情や信頼など実態をより重く捉えていると言え、通常の不妊治療として非配偶者間人工授精を利用して子をもうけた夫婦や、生まれた子にとっても安心感を与える結論だ。生殖補助医療をめぐる立法は十年にわたり手つかずの状態になっており、法整備の議論が深まることを期待したい。

~人間って、なに?親子って何?・・・