逐条解説不動産登記規則(28)(登記研究734 平21・4)

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法務省民事局民事第二噪地図企画官 小宮山秀史

(登記研究734 平214)

第66条 登記識別情報の提供の方法

第六十六条 登記識別情報の提供

 法第二十二条本文の規定により同条本文に規定する登記義務者の登記識別情報を提供する場合には、

 次の各号に掲げる中請の区分に応じ、・当談各号に定める方法による。

 一 電子申請 法務大匝の定めるところにより電子情報処理組織を使用して登副識別情報を捉供する方法

二 書面申請 登記識別情報を記戦した書面を申請書に添付して提出する方法。

2 前項第二号の登記識別情報を記載した書面は‐・『‘・・・・’―一199%9J4祷面は、封筒に入れて封をするものとする。

3 前項の封筒には、発記識別竹裁を提供する申請人の氏名又は名称及び登記のa的を記載しヽ登記識別情報を記哉した書面が在中する旨を明記するものとする。

一 第66条は、登記識別情報の提供の方法について定めている(登記令第二四条の委任に基づく規定である。)。

新設された規定である

 1 登記識別情報は、登記義務者の本K‘la2U‐M‘ ”9 “41 1”1‐1

確認の手統として袱子申請でも書面申請でも利用することができる制度として雛人されたものであり、登記権利者及

     』・‐』・:I1‐iりこ司訂51£をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合に、申

れた規定である。

登記識別情報は、登記義務者の本人徨認について、平成一六年改正前の登記済証に代わる登記手続固有の本人

                       IJ ’aj5:ご察kx一け叱ものであり、登記権利者及

び登記義務者が共同して権利に関する登記をす

請情報と併せて提供しなければならない情報である。

 2 登記識別惰報の提供が必要な者

 登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申諸をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の

申請をする場合は、登記識別情報を提執することができない正当な理由があるときを除き、登記識別情報を申清情報

と併せて提供しなければならないとされている(不登法第二二条)。

             y。:‐1.。111L、1yC桓国こ周する登記の申請をする場合』とは、不登法第六〇条の

                                                     」

 このう有

規定により

、「発記権利者及び登記義務者が共同して権利に関す

規定により、登記権利者及び登記義務者が尹回して洞‥禾・C17;j?i.‘‐ ‐

する登記の申請は、法令に別段の定めがない限り、共同申請によることとなるので、登記義務者の登記識別情報の提

、「発記権利者及び登記義務者が県叫しMiz9‐¥~ r‘1

ゝ登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記を申詣する場合を指す。したがって、権利に関

                        」”E・―’aりc、堕£鏡陥者の登記識別情報の提

供を要することになる。

 次に、「政令で定める登記」とは、共同申請ではないが、特に登配訓&SS6S91sy lix &o4’ ̄

をする必要がある登記であり、登記令第八条惧二項にその登記が定められている。登記令第八条第一項において定め

られている具体的な登記は次のとおりであり、旧不登法において登記済証の提出か求められていた登記と同じである。

① 所有権の登記がある土地の合筆の登記

所有権の登記がある建物の合体による登記等

所有権の登記がある姚物の合併の登記

特に登記識別情報の提侠を求めることにより、本人確認

(登記研究734 平21幽4)

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(登記研究734 平214

35 逐条解説不勣産登記規則

 ④ 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記

 ⑤ 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記(所有権の保存の登記)の抹消

 ⑥ 質権又は抵当権の順位の変更の登記

 ⑦ 共有根抵当椿の債権の優先弁済の定め(民法第三九八条の一四第一項ただし書(同法第三六一条において準用

する場合を含む。))の登記

 ⑧ 仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消

 また、登記令第八条第二項各号においては、これらの登記のうち、①から③までについて啖いずれか一の不動産

の所有権の登記名義人の登記識別情報の提供で足りる旨規定しているが、これも旧不登法下における登記済証の提出

の考え方を引き維いだものである。

 3 登記識別情報を提供することができない正当な理由

() 客観的にみて、申請時において、有効な登記識別情報が存在しない場合は、すべて「申請人が登記識別情報を提供することができない正当な理由」があることになると考えられる。具体的に、準則第四二条第一項では、次のように定めている(注1)。

 ① 登記識別情報が通知されなかった場合

 ② 登記識別情報の失効の申出に基づき、登記識別情報が失効した場合

 ③ 登記識別情報を失念した堤合

  •      登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずることとなる場合
  •      登記識別情報を提供したとすれば申請に係る不動産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合

(注1)このうち、③及び④については、平成二〇年⊇旦一日法務省民二第五八号民事局長通達による準則の一部改正により追加されたものである。

 このうち、③の「登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずることとなる場合」を追加した趣旨は、同じ登記識別情報を別の申請において使用する場合には、登記識別情報の保管・管理の上で問題があると指摘されていたことによるものである。

 例えば、同じ土地に同じ所有権の登記名義人が抵当権の設定の登記を複数回する場合に提供する登記識別皆報叫いずれも同じ登記識別情報である。また、分筆の登記がされても、登記識別情報が通知されている登記名義人に対して、分筆後の土地ごとに異なる登記識別情報が新たに通知されることはなく、分筆後の各土地の登記名義人の発記識別情報は同一になることになることから、分筆の前に登記識別情報の通知を受けている低当梧の登記名義人が、分筆後に、分筆後の各土地の抵当権の抹消を別々の機会に巾請する場合に提供する登記識別情報は、いずれも分筆前に通知された同じ登記識別皆報である。このように、同じ登記識別情報を登記の申請に複数回にわたって提倶する場合、その登記識別情報を提供して登記の中請をする手続の際に第三者に知られる可能性が生じることから、登記識別情報の保管・管理の面で問題があるとの指摘である。

 そこで、このような問顛を解消する観点から、登記識別情報を提供することができない正当な理由に、「登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管埋する上で支障が生ずることとなる場合」が追加されたものである。

 したがって、所有権の移転の登記の申請や分筆後の全部の土地についての抵当権の抹消の申請においては、この理由は、正当な埋由として認められないであろう。また、電于申請においては、暗号化の技術を利用して、登記識別情報を提供することになることか穴このような場合であっても、その登記の申請の際に登記識別情報が第三者に知られる可能性は、限りなく少なくなることから、そのリスクを回避し、かつ、迅迪に登記を完了することができるという登記識別情報の劇度の本来のメリットを享受するためにも、電子申請を話用するのがよいと考える。

 次に、④の「登記識別情報を提供したとすれば当該申請に係る不勁産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合」を迫加した趣旨は、大量の不動産や多数の共有者を対象とするなど、参軟の登記識別情報の提供を要する登記の申請を一度にする場合、登記の申請の前に行う有効証明請求に相箔の時間を要するぱが、電子申請をするためには、現行のシステムにおいては、これらを個別に賠号化し、提供様式等を作成する必要があるため、相当の時間を要することなどから、迅速な決済に支障が出る等の問題が指摘されていたことから追加されたものである。

 したがって。提供する登記識別情報が数個程度であり、登記識別情報の提供が多大な負担とならないような場合は、この理由は、正当な理由として認められないであろう。

 ()したがって、これらの場合には、有効な登記識別情報の提供をすることなく申請がされたとしても、申請が却下されることはなく、不動産登記法23条第一項に規定する事前通知等の手続きにより本人確認が行われることになる。

()登記識別情報の提供を要する登記の申請をする場合において、登記識別情報を提供することができないときは、この「正当な理由」を申請情報の内容とする必要があり(登記令第3条第12号)これを申請情報の内容としていない場合には、補正の対象となる。(準則  )すなわち、登記識別情報を提供することができないことについて正当な理由が申請情報の内容とされていることによって、登記官は申請人が単に登記識別情報の提供を失念したのか、登記識別情報を提供することができないのかが分かり、この理由が申請情報の内容とされているときは、登記識別情報の提供を求める旨の補正を求めることなく、直ちに、事前通知党による本人確認の手続きをすることができることになる。

()「正当な理由」があるかどうかの判断は、例えば、そもそも有効な登記識別情報が存在しているかどうかについては、登記所側でかっかん的に判断することができるが、失念したかどうかについては、事実上、登記名義人側の申告によるほかはないと思われる。登記識別情報を提供することができないことについての正当な理由の有無の判断は、申請情報や登記記録等のみによってすれば足り、申請人に理由を根拠づける資料等を提供させることなどの実質的な審査をする必要なない。ただし、その理由が申請情報や登記記録等から明らかに誤っている場合は、その状況等によっては、登記官党による本人確認調査(不登法第二四粂)をすることになるであろう(注2)。

(注2)例えば、代位申請により登記名義人となった者には、登記識別情報が通知されないところ、代位申請による登記名義人となった者が登記義務者となる登記の申請においては、「通知されていないこと」が登記識別情報を提供することができない正当な理由になるにもかかわらず、『失念したこと』や『登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずること』などを正当な理由としている場合は、申請人となることができる者本人からの申請であるか疑わしいこととなる。また、直前に登記識別情報の失効の申出がされ、その登記識別情報が失効されている場合に、「失念したこと」や「登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずること」などを正当な理由としているときも同様である。

 登記識別情報を提供することができない正当な理由がないのに、登記識別情報の提供がされないときは、申請は却下されることになる(不動産登記法第25条第九号)。また、正当な理由があるときは、不登法第二三条第一項に規定する事前通知による本人確認手続を行うことになる。ちなみに、いわゆる連件申請がされた場合において、前の登記の申請の登記完了時に通知されることとなる登記識別情報戻後の登記の申請の必要的添付情幄となる場合かあり、この場合には、後の登記の申請との関係では、申請時に登記識別情報を提供することが物理的にできないが、第六七条の規定により、登記識別情報の提供があったものとみなされる結果、後の登記の申請は、必要な登記識別情報の提供がある申請として取り扱われることになる。したがって、この場合は、そもそも「登記識別情報を提供することができない正当な理由」の問題にはならないことになる。

 なお、有効な登記識別情報を提供して申請がされた後に登記識別情報の失効の申出がされたときは、申請時に有効な登記識別情報の提供がされている以上、その申請は、形式的には適式な申請であって、登記識別情報の提供がないという埋由で申請を却下するのは相当ではないと考えられる。ただし、登記官が、その状況によって、申請人となることができる者以外の者が申請していると疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、その登記の申請については、登記識別情報による本人確認に加えて、不登法第二四条の規定に基づく登記官による本人確認調査を行うことになろう。

 4 登記識別情報の秘匿性の確保の必要性

 登記識別情報は、その名のとおり、登記の申請において、登記名義人自らがその登記を申請していることを確認するために用いられる符号その他の情報であって、登記名義人を識別することができるものであり(不登法第二条第一四号)、登記の申請において、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、その登記を完了したときに、新たに登記名義人になった申請人に対して通知される登記官が定めた情報である(不登法第21条)。この登記識別情報は、現在、アラビア数字及びアルファベットの組合せからなる12けたの符号が用いられている(第六一条)。すなわち、登記識別情報は、登記済証とは異なり、それ自体は特定物としての個性を有するものではない(複雑な数値や記号の組合せにすれば、確率的に同じ情報を得ることは難しくなるが、特定物とは異なり、この世の中に一個しか存在しないという性質はない。)ので、その秘匿性を維持することが重要であり、銀行のキヤッシュカードの暗証番号のように、第三者に盗み見られないような方法で管理する必要かある。

 そこで、登記官が登記名義人となる申請人に登記識別情報を通知する場合映この秘匿性を藤保するために、第六三条に通知の方法が具体的に定められている。登記識別情報が、申請手統において、『当該登記名義人自らが申請していることを確認する』ための情報として機能するためには登記の申請人が申請の際に登記所に登記識別情報を提供する場合においてもこの秘匿性を確保する必要がある。本条は、登記の申請人が申請の際に登記所に登記識別情報を提供する場合においても登記識別情報の秘匿性を確保するために、提供の方法を定めている。